11/13  <もんじゅ勧告>核燃政策、曲がり角…新組織探し、難航確実

もんじゅの運営見直しを勧告 原子力規制委、馳文科相に

朝日新聞デジタル 11月13日(金)21時7分配信

日本原子力研究開発機構が運営する高速増殖原型炉「もんじゅ」=11日午後、福井県敦賀市、朝日新聞社ヘリから、上田潤撮影


高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)を運営する日本原子力研究開発機構に対し、レッドカードを突きつけた13日の原子力規制委員会の勧告は、国策の核燃料サイクル政策に大きな影響を与える可能性がある。監督する文部科学省は、海外の原子力企業や電力会社などとの提携も含めて「新組織」の検討を始めるが、技術面や能力面で選択肢は極めて限られる。勧告への報告期限となる来年5月ごろまでに示せなければ、もんじゅは廃炉を含めた抜本的見直しを迫られる。【鳥井真平】

 

「(新組織を検討する)今後の取り組みに、助言・指導いただきたい」。13日に規制委の田中俊一委員長から勧告の文書を受け取った馳浩文科相はこう呼び掛けたが、田中委員長はその後の記者会見で「勧告を出して、自分で答えは出せない」と述べ、新組織の検討の議論に参加する考えはないことを強調した。

 原子力機構は不祥事などに際し過去2回、看板の掛け替えで生き残ってきた経緯があるが、田中委員長は会見で「勧告には原子力機構に代わる(組織)と明確に書いている」と話し、「3回目」の掛け替えを改めてけん制した。

 文科省の新組織の検討過程で、ポイントになるのは液体ナトリウムを取り扱う技術の有無だ。もんじゅでは冷却材として、空気や水に触れると爆発する恐れがある液体ナトリウムを使う。扱った経験を持つのは国内には今の原子力機構しかなく、文科省は海外の原子力企業との連携も含めて検討を始める方針だ。

 ただ、海外を見渡しても米英独などの主要国は高速増殖炉の開発から撤退しており、新たなパートナーを見つけるのは困難を極める。高速増殖炉の研究は1950~60年代に欧米で進んだが、やはり液体ナトリウムの管理技術が壁となり、90年代ごろまでには相次いで中止や撤退に追い込まれた。ナトリウム漏れ事故を起こし、98年に廃炉になったフランスの実証炉「スーパーフェニックス」がその代表例だ。

 現在、高速増殖炉の開発を積極的に進めるのはロシアや中国、インドの3カ国にとどまるが、安全保障や核セキュリティー上の理由で、提携の余地はないとみられる。田中委員長も会見で「(新組織が)ないと言い切るわけにはいかない。(高速増殖炉については)世界中でもあまり研究されておらず個人的評価は控える」と突き放した。
    

11/5 原子力機構に代わる組織探しは困難 もんじゅ動かないまま瀬戸際

福井新聞ONLINE 11月5日(木)17時33分配信

新たな運営主体への変更が求められることになった高速増殖炉もんじゅ=4日、福井県敦賀市白木1丁目






高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)で続く保守管理の不備問題で、原子力規制委員会は4日、運営主体として日本原子力研究開発機構は「不適当」と断じた。規制委は所管する文部科学相に対し、別の運営主体を明示するよう勧告する方針だが、原子力機構に代わる運営組織を見つけるのは困難だ。1995年12月のナトリウム漏れ事故から20年。ほとんど動かないまま、国の核燃料サイクル政策の中核として位置付けられてきたもんじゅは、瀬戸際に立たされた。

 

■「20年、同じ繰り返し」

 「20年前のナトリウム漏れ事故以降、品質保証の問題は根深く存在している」。規制委は、もんじゅで続く保守管理の問題に対し、原子力機構が潜在的に抱えるずさんな体質を糾弾した。

 ナトリウム漏れ事故では、当時の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が現場映像を意図的に編集した「ビデオ隠し」が発覚。その後、動燃は解体的出直しを迫られ、核燃料サイクル開発機構、今の原子力機構へと改組されてきた。

 ただ、もんじゅのトラブルは絶えず、2008年にはナトリウム検出器の誤作動が続発。運転再開した10年には炉内中継装置が落下し、再び停止した。そして、12年に機器の大量点検漏れが発覚して以降も管理ミスが相次いだ。

 規制委は「この20年、同じようなことを繰り返してきた」(田中俊一委員長)とし、原子力機構では抜本的な改善は不可能と判断した。

 ■施設の安全性議論なく

 規制委は、もんじゅの運営主体を変更するよう文科相に勧告する方針だ。だが、福井県内の関係者は「民間の電力事業者に保守管理の能力はあったとしても、高速炉の技術的な能力はない」と指摘し、規制委がもんじゅを運営できる組織の“解”を求めているようには思えないと首をかしげる。

 文科省が代わりの運営主体を明示できない場合、規制委はもんじゅの廃炉も含めて在り方を抜本的に見直すよう求める方針で、こちらが主眼ではないかとの見方もある。

 「もんじゅが、福島事故を踏まえた安全基準に不適合だとした上で勧告するなら分かるが、その議論がない。規制委は廃炉しか考えていないのではないか」と話すのは、原子力行政に詳しい来馬克美・福井工大教授。規制委が高速炉特有の新規制基準をつくらず、もんじゅの施設自体の安全性の議論がない点を疑問視した。

 ■文科省に「げた預け」

 もんじゅは、昨年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画の中で、「高レベル放射性廃棄物の減容・有害度の低減などの向上のための国際拠点」と位置付けられている。仮に廃炉の方向になれば、国の核燃料サイクル政策に大きな影響が出るのは必至だ。

 もんじゅの開発には、これまで1兆円以上の国費が投入されたが成果は出ず、存廃議論は民主党政権時代にもあった。新たなエネルギー戦略の策定をめぐり、素案の段階では「廃止」を打ち出していたが、計画の最終段階で従来路線に戻した経緯がある。

 規制委の田中委員長はこの日の記者会見で、廃炉の可能性について「(所管する)文科相がいろいろ考えて判断する」と述べるにとどめ、今後の設置許可取り消しなどについては明言を避けた。

 原子力資料情報室(東京)の伴英幸共同代表は「文科省にげたを預けたような形で、規制委の勧告内容はやや甘い」とした上で、「もんじゅの正当性がどんどん見えなくなってきている。実現があやしい政策をいつまでも維持しておくべきではなく、政府は廃炉に向けて本格的な議論をすべきだ」と指摘した。

福井新聞社

2015年10月16日

おしょうさんと約束してから、早11日目が過ぎた。

朝4時起き。2時間机に向かう。2016年10月5日が約束の日だ。

私は出来上がったばかりの小説を小脇に抱え、帝国ホテルのロビーで小野さんを待つ事になった。2016年は一体どんな年になるのか?期待と不安でまさしく胸がいっぱいになる。

 

エイベックスがJASRAC離脱 音楽市場が活性化か?

朝日新聞デジタル 10月16日(金)15時6分配信

音楽大手のエイベックス・グループ・ホールディングスが、日本音楽著作権協会(JASRAC)に任せていた約10万曲の著作権管理を系列会社に移す手続きを始めた。JASRACがほぼ一手に引き受けてきた著作権管理事業に競争が生まれ、音楽市場が活性化する可能性がある。


 管理事業者はレコード会社や放送局、カラオケ店、飲食店などから著作物の使用料を受け取り、作家らに著作権料を分配する。エイベックスによると、今後、それぞれの楽曲の著作権者の合意を取り付け、系列の著作権管理業社イーライセンスに管理を任せる。

 イーライセンスの管理手数料は、たとえばCDを販売した場合、使用料の5%で、JASRACの6%よりも安い。その分、権利者への分配金が多いとされる。また、無償の宣伝用CDを作るときは使用料を取らないなど、レコード会社の宣伝活動をしやすくしている。(岡田慶子)

朝日新聞社

なぜ東京国際映画祭は世界で無名なのか

「映画村」のなかで蕩尽される11億円

日本映画は大変不幸である。なぜなら日本の多様な声を世界に届ける「国際映画祭」が日本にないからだ。今年も10月22日から10日間にわたって「東京国際映画祭」が開催されるが、その任務は映画芸術の祝福にはない。予算の半分以上が税金で賄われる公益性の高いイベントでありながら、映画会社と広告代理店という「既得権益」を強化するばかりで、日本の映画産業や映画文化を育む機能を果たせていない。

 東京国際映画祭の事業費の内訳をみれば、この映画祭が誰のために行われているのかがよくわかる。主催する公益財団法人ユニジャパンの決算報告書(2014年度)によれば、東京国際映画祭の事業費は約10億9656万円である。このうち66.6%を占める7億3052万円は「委託費」となっている(※1)。

 注目すべきはその非常に偏った委託先だ。2010年から14年の5年間では、KADOKAWAが広報宣伝事業、クオラスと北の丸工房が運営事業を、いずれも5年連続で委託されている。また12年より映画祭のオンラインチケット販売を担当している会社は電通の関係会社で、電通も13年を除くすべての年で委託を受けている。ユニジャパンの理事も広報事業と上映会場委託の東宝、歌舞伎座上映とイベント委託の松竹、メイン会場委託の森ビルなど、映画祭に近い特定の大企業の幹部という構成になっている。つまり健全な競争を排除した一定のグループが公益事業の運営、事業費を独占している。

 

昨年、東京国際映画祭は大きくシフトチェンジした。首相官邸、経産省による「クールジャパンとの連携」の号令とともに、一昨年まで6億円程度だった事業費はほぼ倍増した。昨年度は、経済産業省、文化庁、東京都、国庫補助金から約11億円が拠出されている。これは活動支出全体の約70%にあたる。そして、追加事業費のほとんどを託された広告代理店は、昨年、『ニッポンは、世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく。』という異例のキャッチコピーを書いた。
 今年、経産省は5年ぶりにカンヌ映画祭の「ジャパンパビリオン」事業を支援した。しかし内容は場違いな「クールジャパン」の押し売りだった。運営側の思惑通り、国内メディアは「カンヌで『くまモン』が大人気」などと報じたが、ほとんどの海外メディアは相手にしなかった。
 これは「ジャパンデイ プロジェクト」事業の第1弾で、運営元は映像産業振興機構とアサツーディ・ケイ、それに東京国際映画祭でも委託を受けていたクオラスである。映像産業振興機構の市井三衛事務局長によると、経産省から1億200万円の助成金が支払われる予定だという。
 その後、私が経産省に行った情報公開請求によって、ジャパンデイプロジェクトへの助成金は「ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金(J-LOP)」だとわかった。これは経産省と総務省による155億円の共同基金で、東京国際映画祭も助成を受けている。
 問題はこうしたクリエイティブ産業への支援が、現場に届かず、映画会社や広告代理店といった「映画村」のなかで計画、実施されている点にある。J-LOPは基金管理を映像産業振興機構に委託している。ここには前述したクオラスの社員が出向している。またユニジャパンの理事13人中7人は映像産業振興機構の理事を兼任している。さらに政府にJ-LOPの予算の提言を行っている経団連のコンテンツ部会や政府の知的財産戦略本部など多数の公職にもこれらの理事が名を連ねている。

 

遠藤周作『沈黙』は国内での撮影を断念

日本映画のために本当に必要なことは、製作現場に投資を呼び込む枠組みづくりである。国際フィルムコミッショナーズ協会(AFCI)によると世界の撮影消費は880億ドル(約10兆5600億円)に上る。このため世界の多くの国では映画産業へのインセンティブ制度を用意している。これはその国で働く人の雇用と産業現場への消費の誘引に公的な助成を行う制度だ。補助対象は映画のみならず、テレビドラマ、アニメーション、ゲームなどにも広がっている。しかし日本は国際競争から取り残されている。東京都によると2013年に都内で撮影された映画の90%は国内プロダクションである。
 「J-LOP」のように複数年度にわたる公的基金には、本来、投資の流れを変える力がある。たとえばイギリスでは、映画やテレビドラマだけでなく、アニメや子供向け番組にもインセンティブ制度を拡大した結果、導入から9カ月後には国内アニメ製作会社の仕事が300%以上も増え、これまで叶わなかった自社製作や共同製作も増加した。不運なことに、日本では公的コンテンツ基金が設立されても、こうした仕組みは取り入れられず、投じられた基金は継続性もなく消滅するだけだ。
 日本の映画行政が基礎学習を終え、お利口になるまで、世界各国は待ってはくれない。東京国際映画祭は「アジア最大規模」を心の拠り所にしているが、第1回の30年前とは状況は大きく変わっている。
 中国の映画市場は3年前、日本を抜いて世界2位となった(※2)。その後も成長が続き、今年は日本市場の約3倍の規模になると見込まれている。この巨大市場への進出を目指すため国際共同製作も増加している。同時に上海国際映画祭、北京国際映画祭、廈門国際アニメーション映画祭なども世界的な注目を集めている。
 また韓国はアジアで最も映画館に行く人の比率が高い国だ。東京と同じ10月に開催される釜山国際映画祭も注目度が高い。これは「アジアのハブ」として機能する韓国映画産業の注目度とも関係している。

たとえば昨年には、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』が韓国で撮影された。韓国には映画産業への投資の30%を還元するインセンティブ制度があり、本作でも韓国政府は約3億円の助成金を支払っている。推計すると本作で韓国の産業現場には約11億円の投資が流入したことになる。また本作で韓国の受け入れ能力の高さが証明された。2019年には釜山市に総合映画センターが開業予定で、高度な撮影インフラの整備が進む。
 一方、日本の体制は遅れている。いまや日本が舞台の物語ですら、日本では撮影されない。今年、遠藤周作原作、マーティン・スコセッシ監督の推定製作費5000万ドル(約60億円)の日本語時代劇『沈黙』の撮影が全編台湾で行われた。『沈黙』は数年前から日本でオーディションが行われ、撮影も模索されていたが、最終的に選ばれたのは日本の時代劇撮影所ではなく台湾だった。いま映画プロデューサーにとって政府支援の確約は不可欠な要素で、台湾政府はいちはやく支援の覚書を締結することでロケ地を確定させた。
 世界の映画産業はパラダイムシフトに入っている。世界市場の変化だけでなく、消費者行動の変化により、100年の歴史をもつ映画の概念が根本から変わろうとしている。その中においても、日本では国際的な実務能力をもたない「映画村」の人間たちが、政府から税金を引き出し、利権を貪っている。人を育むことを無視した施策こそ、日本映画産業の国際的な発展を大きく妨げている。「国際映画祭」というひとつの事例をとってみても、産業に責任をもたない人間たちによって、無責任な未来がデザインされている。日本映画を次世代につなぐには、この利権構造との決別が急務である。

 ※1:公益財団法人 ユニジャパン|事業計画書・報告書
https://unijapan.org/about/projects.html
※2:米国映画協会のまとめによると、2014年の世界の映画市場は36.4億ドル。そのうち米国・カナダが10.4億ドル、中国が4.8億ドル、日本が2.0億ドル、フランスが1.8億ドル、イギリスが1.7億ドル、インドが1.7億ドル、韓国が1.6億ドル。

答える人=映画プロデューサー ヒロ・マスダ